入学試験や仕事の期限などが「良いストレス」となれば、人は適度な緊張感と集中力をもって、普段以上の力を発揮できるかもしれません。逆に、良いストレスが少なすぎると、生き甲斐を見失ったり、空虚感を感じたりして、悪いストレスになってしまう可能性もあります。
ストレスは個人の価値観や捉え方によっても変わってきます。たとえば、仕事に熱心で真面目な人は、仕事にあまり重きを置いていない人よりも、仕事上の失敗をストレスと感じやすいでしょう。一方、失敗を糧とするようなタイプの人にとっては、むしろ「良いストレス」になることもあるかもしれません。
ストレスには、小さなものから大きなものまで、さまざまなものがあります。
人生の大事件(大ストレス)には、就職や退職、結婚や離婚、出産や死別など、人生の転機となるような大きな出来事があてはまります。
嫌な出来事(中ストレス)には、仕事で失敗をした、大事な物をなくした、いたずら電話がかかってくる、などの不快な出来事が含まれます。日常の煩わしいこと(小ストレス)には、隣の家の犬が吠えてうるさい、立ち寄った喫茶店の従業員の愛想が悪かった、いつもの電車に乗り遅れた、などの、日常生活上の些細な事柄のことを指しています。
ストレスにうまく対処できずに、心身に負担がかかり始めると、こころやからだ、行動に不調が出ることがあります。これらの反応は、生体のSOSと捉えて、きちんと治療をする必要があります。
このように、ストレスとストレスがもたらす心身の不調が、相互に悪循環を形成してしまうことがあります。このような悪循環には、どこかで必要な対処をし、流れを変えていく必要があります。
人が生活を送っていくうえで、物理的・精神的に他者との関わりを避けることは不可能です。そのため、ストレスそのものを完全に避けることは不可能と考えられます。ストレスについて考えるときに重要なことは、ストレスをどう取り除くかということよりも、ストレスといかに付き合うかということ、であるといえるかもしれません。
ここでは特に、人生のなかでストレスがもっともかかりやすい壮年期(およそ30代~50代)に焦点をおいて、ストレスとその対処方法について、一緒に考えていくことにしましょう。